「感染症の世界史」
初めのあいさつ
こんにちは。鹿児島の勤務先からの更新です。
広島の当直先から新幹線、バスを乗り継ぎ、深夜の帰宅。そこから6時起きで本日の勤務先まで来ました。ちょっときつめですが持たざるものですしやるしかありません。まあ、来てしまえば半分仕事は終わったようなものなのでこれからは気ままに読書でもします。
感染症の世界史
2017年12月に出版された本です。感染症が猛威をふるっている今だからこそ勉強になることが多いと考えて読んでみました。
最初に要約すると
「感染症と人類との闘いは今後も繰り返す」
的な感じでした。
いろいろと参考になったのでまとめてみます。
代表的な感染症としてスペインかぜやペスト、HIVなどを挙げながら感染症がどのように人類に発症しどのように広がるのかを解説しております。
歴史上どこの場面を見ても常に人類は感染症と闘ってきました。なんとか対処できたとしても病原体が進化してさらに厄介になるという、いたちごっこのような歴史です。ただ、人類も進化してきました。ここで特におもしろかったのはかつてペストが大流行した北ヨーロッパ出身者にHIV耐性をもつ人間が多いということです。ペストとHIVが細胞の同じ箇所から侵入するため、過去の大流行で突然変化が起こり生き残った遺伝子が脈々と受け継がれた可能性があるとのことです。
他に印象に残ったところとしては、多くの新興感染症が動物由来感染症であり拡大のきっかけとして、大規模な熱帯林の破壊による野生動物の住処の減少や人口増に伴う人類の密集化に伴い、動物と人類の接触が多くなったことと述べられていたことです。長距離の移動が容易になったことも拡大を助けます。ここ最近の感染症に関しては起こるべくして起きたようです。
また、食文化や大気・水質汚染の影響から今までがそうであったように今後も中国やアフリカが多くの感染症の故郷になるであろうと予想されておりました。今回のコロナウイルスに関しては本当のところはまだわかっていないのかもしれませんが、今後も同様のことが起きてもおかしくなさそうです。
ウイルス・細菌と人類の共存についても触れておりました。
ウイルスや細菌というと絶対悪のような印象はありますがそうではありません。
CM等でおなじみのビフィズス菌は消化を助け、新たに侵入してくる有害な菌から守ってくれます。大腸菌についても腸内においては有益な役割を担ってくれます。
これは細菌側から見ても、宿主から栄養を安全に栄養を得ることができ繁殖できるため生存戦略としては大変有能であるといえます。
ただ、大腸菌については膀胱炎に侵入すると膀胱炎を引き起こしますし、普段は悪さをしない常在菌については宿主の免疫低下によって感染症を引き起こします。やはり敵でも味方でもなく共存という言葉がふさわしいと感じました。
最後に予防接種を代表にあげて日本の感染症対策については警鐘を鳴らしておりました。
HPVは言うまでもありません。私自身多くの同年代の女性が治療できない状態になるのを見てきました。
少し前に大流行した麻疹や妊婦が感染すると胎児に多大な影響の出る風疹についても同様のことが言えます。風疹についてはアメリカでは男女に、イギリスや日本では女性のみ予防接種をしている時期があり、結果としてはアメリカで風疹患者激減、イギリスや日本では男性に免疫がないことから流行が断続的に発生したそうです。男女ともに罹患しないことが大切です。何事もなく生まれてくれたからよかったですが、私も風疹については危機意識が薄かったと反省しております。
今後はこどもを持つ親としても予防接種については意識を高く持ちたいところです。
本書は具体的な歴史上の人物や出来事を挙げながら各感染症について解説しております。また、人類と病原体との関係性から2017時点で今後も感染症との闘いは続くとしており、今の状況を目の当たりにすると本当に説得力の増す話となっております。
歴史を知ると予防できる感染症を予防することがいかに大切か実感します。こんなに多くの悲惨な出来事が記録として残っており比較的誰でもアクセスできる時代なので参考にしない手はありません。一人の親としても医師としても大変勉強になりました。私の文章では本書のよさが十分に伝わってない気がしますが、自信を持っておすすめできる本です。
まとめ
「感染症の世界史」読んでみました。
この歴史の勉強を通して改めて思うのは今回の新型コロナウイルスの感染拡大はある程度しょうがないのかなってことです。もちろん、個別に見ていけばよろしくない対応はあったのかもしれません。ただ、そんな自分の力の及ばないところで貴重なエネルギーを消費しても仕方ありません。自分のしたいこと、するべきことに力を注ぎます。
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